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2024/11/22 17:31 |
summer day
summer day(短編)




『陽ざしに刺される。』



 こんな表現はあったっけ?
 ふと思う。

 夏。
 夏と言ったら海。

「おーい…ゆーたも早く来いってー」

 向こうから微かに声が聞こえてくる。

 夏と言ったら海。
 海と言ったら…・・出会い…?

 なんてこと思ったワケじゃないけどあまりにも人が、いない。
 平日だからか海岸にはほとんど客がいない。
 ぐるりと見渡しているのは僕たちを入れて20人くらい。


「早く来いって」

 ふと見上げるとテツがいた。

 次の瞬間、テツは200円で借りたパラソルの下であまりの暑さに麦茶を飲んでた僕の腕を引っ張っていく。

 傍目から見ても明らかに元気なテツと比べるとだらりとだれている僕。
 ひきずられている腕もそのままにテツに声をかける。

「なぁ、何すんの?」
「…・・ビーチバレー」

 そう聞いた僕にニヤリと笑いながらテツが答える。

「海と言ったら女とビーチバレーだろ」

 こう付け加えながら僕を引っ張っていく。
 と、次の瞬間。

「あつっ」

 思わず叫ぶ。

「あっちぃー」

 ちなみに「あつい」は「暑い」ではなくて「熱い」の方。
 そして。熱かったのは足。
 さすがにサンダルをしていないと焼けるように熱い。

「オマエ熱くないの?」
「熱い」

 同じく素足のテツに思わず訊いた言葉にテツは即答してくれた。

「はぁ?」

 僕の質問に間髪入れずに答えたテツに意味が分からないという表情を向けてみる。

「気合だ」
「はぁ?」

 またしても意味の分からない言葉が返ってくる。

「走るぞ」
「は?」

 そう言い終わらないうちに走りだしていた。
 僕もテツの走るのを見て思わず走り出す。

 もう、意味がわからない。
 今日のテツはちょっと変だ。
 まぁ、でもいつも変だけど。そんなことをぼんやりと考える。
 
 でも、熱い。
 瞬間、耐えられない熱さにクルリと気が戻る。
 足も熱いけどそれよりも陽差し。

 太陽。
 やりすぎだろってくらいに。












「あー疲れた」





 目の前には『夕焼けに染まる海。』
 まさに言葉通りの光景が目の前にある。
 
 堤防に腰かけて僕とテツは2人で海を眺めていた。
 他にも真治とかトモとか栄ちゃんとかいたけどヤツラは彼女と一緒だからきっと今ごろロマンティックな時間を過ごしてるに違いない。

「…・・あれ?」

 ふと気がついた。

「テツ、オマエ彼女は?」
「……」

 テツの返事がない。
 目には海しかない、みたいな感じで。

「別れた」
「へ?」

 テツのその言葉に思わず変な声が出る。

「だから別れたって。…・・つーか気づけよ最初から」
「…・・ごめん」

 その瞬間、思わず「ぷっ」っとテツが吹き出し、げらげらと笑う。

「…・・んだよ。人がせっかく悪いと思ってんのに」
 
 そのテツの見事な笑いっぷりに少しむくれて言う。

「いや、やっぱゆーたはいいヤツだよ」

 また笑いながら、言う。

「はぁ」

 ―――意味わかんね―――そう思うけど言葉に出さなかった。表情には目一杯出したけど。

 テツがいいならそれでいっか、ってと思う。

 ―――だからいいヤツなのか…?―――

「いっか」

 突然そう言った僕にテツが「なんだよ」っと笑いながら言ってくる。

「行くか。花火始めてるぜ、奴ら。幸せそうに」

 堤防の向こう側を見ながら僕が言うと驚くくらい素早くテツが立ち上がる。

「よっしゃ。奴らの仲を壊しちゃる」

 そうニタリと笑って言いながらもう走り出してる。

「はぁ」

 僕もため息をつきながらも走り出す。

 そう、夏は始まったばかり。



<終>
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2007/09/07 11:36 | Comments(0) | TrackBack() | 日記

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